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SYMPOSIUM

座談会
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MEMBER

  • 村田

    村田 量優

    リハビリ課主任
    理学療法士

  • 野口

    野口 哲也

    リハビリ課副主任
    作業療法士

  • 石田

    石田 順子

    理学療法士

  • 嶋田

    嶋田 ひとみ

    作業療法士

1 老健のリハビリについて

1 老健のリハビリについて

村田 今日は総和苑におけるリハビリについて考えると言う企画だけど…現状の老健施設につて、みんなはどう思っているのかな?

石田 ずいぶんと変わってきたような気がします。より在宅での生活を意識したリハビリが必要になってきていると思います。

野口 確かに、病院と在宅の中間施設という役割が、より明確になってきましたね。

嶋田 実際、入所から在宅復帰まで、あっという間に時間が過ぎていく感じがします。自宅訪問、ご利用者様の意思の確認、ご家族様との調整、住宅改修や福祉用具の検討などやることが山ほどあります。

1.1 老健のリハビリについて

石田 時間が短いからこそ、各専門職のチームワークが大事だと思います。介護保険では、ケアマネジャーを中心に計画(プラン)を立てていきますが、その中でも専門職としてリハビリの果たす役割は大きいと思います。

野口 できれば、リハビリを提供している姿を多職種にも見てもらい、ご利用者様の「しているADL」と、「できるADL」の差があることを共有できれば、みんなで目指す方向が定まり、日常の介護でリハビリが生かされてきますよね

嶋田 在宅復帰に必要なのは、ご利用者様の自宅での動き方や毎日の生活パターン、生活の中での楽しみ(趣味や生きがい)が何かを考えながら、同じ目線で私たちがご利用者様の生活を支えていくことも必要だと思います。

石田 ご利用者様と積極的にコミュニケーションをとっていくこと、またリハビリの専門職としての考えをどれだけ私たちスタッフで共有していくかも大切ですよね。

野口 ICFの考え方で言えば、施設や僕らスタッフは環境要因のひとつ、だから促進要因にも阻害要因にもなりうる。この点をスタッフみんなで自覚できるか、ということが施設の力に繋がっていくのですね。

2 総和苑の継続的なフォロー

2 総和苑の継続的なフォロー

村田 ところで、厚労省は老健施設を在宅で生活できるよう支援する施設とも位置付けたよね。在宅復帰した利用者様をどうフォローして行くかが重要だと考えるのだけど…。

石田 入所している利用者様には在宅復帰を目標にリハビリをしていきます。在宅復帰後の生活がどうなのか?リハビリの結果が生かされているのか?が重要です。総和苑の強みは、訪問リハビリや通所リハビリを通じて継続的にフォローしていける事だと思います。

嶋田 確かに、同じ総和苑のリハスタッフが在宅でもフォローできると、ご利用者様は安心しますよね。

村田 ところで、訪問リハビリの役割について聞きたいのですが

野口 まず、訪問リハビリの良いところは実際の生活に触れることで、課題がはっきり見えてくる事だと思います。その上で、リハビリで広がる可能性(ご利用者様がかなえたい夢)を目標として設定してもらいます。

2.職員の持つ能力の引き出し方

村田 目標を達成するには、何が必要なのかな?

野口 結果をしっかり出していくためには、担当者会議や、リハビリ会議で他の事業所と連携を取る事や、利用者の能力・可能性をみんなにしっかり伝えていく発信力が必要だと思います。

嶋田 福祉用具の利用や住宅改修なんかは穴埋め的な発想になりがちですよね。

野口 そうなんです。安易に「~が出来ない」から福祉用具を入れる…ではなく、福祉用具を使うことで、ご利用者様が「もうできない」と諦めていたことに道が開ける、そのことが大切なのです。

石田 ご利用者様の事を一番に考えると当然の事ですよね。

野口 ご利用者様から「こんなこと出来ると思わなかった」とコメントを頂いたときに、頑張ってよかったな、と感じます。

嶋田 福祉用具には購入・レンタル品、介護度で利用制限があるなど、介護保険制度についてもしっかり知っておかないとご利用者様のニーズにしっかり対応できないと思います。

村田 介護保険制度も福祉用具もどんどん変わっていくので、私たちも遅れをとらないよう、日々勉強していく必要がありますね

3 広がるリハビリテーションの活動場面

3 広がるリハビリテーションの活動場面

村田 だんだん盛り上がってきましたね!
ところで、これからの老健施設って外部に情報発信していくことも大事になってくると思います。介護保険サービス以外に、地域ケア会議や地域支援事業の中で体操教室を行ったり、地域の住民対象に講習会を開いたり、と老健施設のリハビリから発信していく機会がどんどん増え、施設の中だけではなく、地域を見渡す視野とチャレンジしていく気持ちが大切だと思うのですが。

嶋田 今、総和苑では、医師、訪問看護、ケアマネジャー、行政と私たちセラピストが連携して“認知症初期集中支援チーム”を立ち上げました。新オレンジプランで隠れ認知症を見つけ出して受診やサービスにつなげる取り組みです。

村田 もう少し詳しく聞かせてくれますか?

嶋田 例えば、体に異常を感じたら普通は受診しますよね。しかし、認知症の方は、異常があっても自分では健康体そのものだと思っていて、なかなか受診やサービスにつなげられない。そのようなケースに、施設や職種を超えた認知症初期集中支援チームで何回もご自宅に足を運び、粘り強く受診をお勧めし続けます。

3 広がるリハビリテーションの活動場面

野口 それだけ努力して受診やサービスにつなげられたときは感無量ですね。

嶋田 はい、地域に貢献できていることにとても喜びを感じています。

石田 まだまだ氷山の一角かもしれないけど、早期に見つけて受診やサービスにつなげられご自宅で過ごせる期間が長くなる…社会保障費も削減できますね。

野口 住み慣れた場所で出来るだけ長く暮らしたいと思っている方は国の調査が示しているように沢山います。国が期待する理学療法士・作業療法士の将来像は、建物の中でリハビリするのではなく、地域の中で健康寿命を延ばすような活動をするべきだとも言っています。

村田 そう考えるとまさに今の話は、老健施設のこれからのあるべき将来像って感じがします。

4 研修制度について

4 研修制度について

村田 ところで、より良いサービスを提供するには、人材確保がとても重要ですよね。総和苑としても、新卒セラピスト採用を積極的に考えているのですが…新卒セラピストはどんな不安をもっているのかな?

野口 やはり研修も含めた教育体制だと思います。

嶋田 特に新卒セラピストは、老健施設の分野でどうやって動いたらいいのか心配だと思います。

石田 病院しか知らないセラピストも同じことが言えるかもしれませんね。

村田 最初に、新卒セラピストにはPT協会やOT協会の新人教育プログラムの履修してもらいます。

野口 それ以外にも、総和苑独自の教育体制を構築する必要がありますよね。

石田 新卒セラピストの中には老健施設で働くことを敬遠する人も多いと聞いています。

4 研修制度について

村田 確かにそうです。しかし老健施設の立ち位置(在宅復帰・在宅支援を見据えた中間施設という役割)がはっきりしてきた今こそ、病院での疾患に応じたリハビリを引き継ぎ、提供できる人材を育てていく必要がありますね。

石田 そのためにも、私たちセラピストが老健施設だからこそ出来る魅力を教育も含め発信していかないとだめですね。

嶋田 実際に担当を持った時は、私たちセラピスト全員でフォローし、不安や心配をどんどんつぶしていければいいですね。

野口 それと在宅目線であるからこそ、仕事を進めていくうえで知りたいことは多くなってくると思います。住宅改修とか福祉用具とか…。

嶋田 介護保険施設ならではの職種を超えた研修会や、地域での専門職の勉強会もたくさん開催されています。

野口 新人・ベテランもどんどん研修会や勉強会に出る環境づくりをみんなで取り組む必要がありますね。

5 求められる人材って?

5 求められる人材って?

村田 最後に、皆さんはどのような人材を希望しているか聞かせてください。

石田 老健施設でのリハビリテーションは、看護師、介護福祉士など、多職種と協力して進めなくてはなりませんので、一番は協調性が大事だと思います。それと専門職として自分の意見をしっかり伝える事も大事ですね。

嶋田 私は「笑顔で接すること」だと思います。リハビリの知識・技術も必要だけど、ご利用者様の認知症が進行すればするほど、笑顔でのコミュニケ―ションが大事になってくると思います。

野口 不安なこと、わからないことはどんどん聞いてくる人材が欲しいですね。「もう実習生ではないのだから…」という遠慮は、最終的には利用者の不利益につながってしまいますから。

村田 ご利用者様は全員私たちの大先輩です。今の時代を作ってきた大先輩に「教えていただく」という謙虚な気持ちで取り組んでいく姿勢が何よりも大切だとおもいます。私たちも常に自分を振り返りながら資質向上に努めていきましょう。

今日は貴重なご意見ありがとうございました。